自閉スペクトラム症(ASD)をもっている方の待ち時間の過ごし方 ~アプローチ方法と実例~

こんにちは。

生活介護 笑(えみ)の勝井です。

新年度が始まったかと思いきや、もう5月になってしまいますね。

寒暖差が激しい日もあるので、体調に注意して支援にあたりたいものです。

皆さまはいかがお過ごしでしょうか?

待つことの大変さ

     来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ

小倉百人一首のカルタを嗜まれる方は思わず手が伸びそうになってしまったのではないでしょうか。

この一首は「いつまで経っても来ない恋人を待ち続けるのが辛い」ということを謳っており、「待つことの大変さ」が表現されています。

皆さまは、待ち時間(≒隙間時間)が発生した時にどのように過ごされていますか?

待つ目的や時間、状況等にもよるかもしれませんが、

スマホをいじる、本を読む、映画を観る、ただ何もせずぼーっとしている…等々、それぞれの過ごし方があると思います。

また、待ち時間が長くても平気な方もいれば、イライラしてしまう方もいらっしゃるかもしれませんね。

ASDをもつ方の中には、待機することが苦手な方がいらっしゃいます。

「いつまで待てばいいの?」              

「今は何をする時間なの?」

「早くお昼ご飯が食べたい!」 

目に見えないものの理解が難しかったり、待ち時間の先にあるスケジュールが待ちきれない等の理由から、待っていることに苦痛を感じ、他害・自傷に発展してしまうケースがあります。

また、何もしないでいることにより、他のことに注意が向いてしまったり、周囲の人の注目を得たいがために不適切とされる行動に出る方もいるかもしれません。

では、支援する側はどのような工夫・配慮をすると良いのでしょうか?

落ち着いて待っていただくために

落ち着いて待ち時間を過ごしていただくためには、以下のようなことが大切になります。

①待ち時間にやることを明確にする

笑の利用者様の多くは、長い待機が発生する時間に何もしないのではなく、「余暇」のスケジュールを組み込み、余暇物品や余暇課題に取り組まれています。

具体的には、パズルやプッシュポップ、作業課題よりも簡単に取り組める余暇課題などを提供しています。

このように、やることをあえてつくることで何もしないでただ待つだけの時間を減らすことができます。

ただし、注意点として、負荷がかかりすぎない内容にすることが大切です。

また、本来待ち時間を少なくするためではなかったものの、何かしらの目的のあるスケジュールを追加した結果、待ち時間も減らせたという場合もあるでしょう(例:新しいスキルを身につけるための余暇課題をスケジュールに組み込んだ。結果的にその分待ち時間も減った)。

②目に見えない時間を見える化する

具体的には、スケジュールを提示しておくことで「今は○○をやって、次は△△をやる」ということを伝えたり、時計やタイムタイマー等を使用して、「あとどのくらい待てばよいのか」を目で見てわかるようにすることが挙げられます。

①においても言えることですが、これは本人に合った過ごし方なのか?意味合いが伝わっているのか?ということを考えたり、検証することが大切です。

スケジュールであればどの利用者様に対しても一律に写真で提示すればよい、というわけではありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

+α 本人の興味・関心を考慮する

本人の興味・関心を踏まえて待ち時間の過ごし方を考えられると更に良いのですが、興味・関心が強すぎてしまうと、今度は終わるのが難しくなってしまうので注意が必要です。

また、人によっては興味・関心のあるものがなかなか見つからない、という場合もあります。

笑の1日のスケジュール

利用者様によって異なりますが、笑では以下のようなスケジュールで過ごされています。

10:00 散歩
11:30 余暇
12:00 昼食
13:00 外課題
13:30 余暇
14:00 作業
14:30 散歩
15:30 余暇
16:00 帰所

赤文字のところが余暇であり、1日の中で30分×計3回待ち時間が発生することになっていますが、実際には10~20分多く待ち時間が発生することもあります。

待ち時間の過ごし方いろいろ

さて、笑の利用者様は待ち時間(余暇時間)をどのように過ごされているのでしょうか?

①パズル

 

 

 

 

 

 

②プッシュポップ

 

 

 

 

 

 

 

③ペットボトルのキャップの出し入れを繰り返す

 

 

 

 

 

④専用の余暇課題

 

 

 

 

 

 

 

⑤プリント(見本の文を写し書きする、電卓を使いながら計算する)

 

 

 

 

 

 

⑥クッションを使って休憩する

 

 

 

 

 

 

 

S様の事例 ~今後、待ち時間をどうするか?~

S様は20代男性の利用者様で、笑を利用開始されてから1年ほど経ちます。

物事の開始・終了を理解するのが困難であり、やることが明確であれば落ち着いて過ごせることが多いものの、過ごし方が曖昧であると何をしてよいかわからず、落ち着かなくなる傾向があります。

S様の場合、待ち時間には余暇課題やパズルにも取り組まれているのですが、「タイマー」というスケジュールがあります。

「タイマー」は、次の活動までタイマーをセットし、鳴ったら次の活動へ移る流れになっていますが、S様自身は特に何もしないという設計になっています。

また、昼食前の「タイマー」では、40分もの待ち時間が発生する場合もあり、離席されたり、大声を出す、ご自身の頬を叩く行為等が見られやすいです。 

                                                    「タイマー」の過ごし方

そのため、今後、S様の強みを活かしつつやることを明確にした余暇を提供する予定となっています。

どのような余暇を提供したのか、アセスメントの結果どうだったのかは、またいつかご紹介いたします。

楽しみにお待ちください。

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