自閉症の方への絵カードの使い方

暑い日々が続き、「暑い」しか言ってないような日々を過ごしている野﨑です。

さて、早速ですが下の写真をご覧ください。

この写真を見て、何を思いましたか?

「車に乗ってくれってこと?」

「ドアを閉め忘れた?」

「室内の掃除の途中」

「単なるドアの開いた車」

などなど、見た人の受け取り方で意味がどうにでも取れるかと思います。

今回、【絵カード】の支援で似たような経験をしたので

皆様に知って頂きたいと思い書かせてもらいました。

笑では、支援の根幹である【視覚的なコミュニケーションの定着】のため、

【絵カード】を様々な場面で利用しています。

例えば

スケジュール

トイレなど

様々な場面で視覚的な情報の理解を図っています。

視覚的に得る情報の方が理解しやすいのは、いわゆる定形発達と言われる社会の中の

多数派の人たちも同じではないでしょうか。

しかし、理解しやすいはずの絵カードでも、提示の方法によっては行動できた・できなかったの違いに

つながってしまうことを、つい最近身をもって体験しました。

今回は、その体験を皆さんにお伝えしたいと思います。

ある利用者A様で、なかなか席に座ることができない方がいました。

そこで「席に座る」絵カードを作成し、席に座ることを視覚的に伝える支援を

開始しました。

支援の方法としては、着席して自立課題に取り組む作業の時間の中で、

立ち歩きが見られたら

ご自分が着席している写真カードを提示することで、

「席に座る」という指示を理解していただく支援に取り組みました。

その結果、カードの提示から着席するにつながるまでには時間がかかったものの、

今では絵カードの意味を理解して、

絵カードを提示すると自ら席に着くことができるようになりました。

そこで味をしめた、この私。

別の利用者B様にも同じ方法で支援することにしました。

(席に座っていられない、という課題のある方は、多くいらっしゃいます。)

利用者B様も、なかなか席に座ることができません。

さっそく、A様の支援と同じように、作業の時間中に立ち歩いたところで

「席に座る」カードを提示したところ…。

A様と違い、絵カードを見せた瞬間に顔の表情が

「なにこれ?」

…言わなくても分かります。

先に結果から言ってしまうと、A様とB様では、同じカードを提示してみても、全く受け取り方が違いました。

A様にとっては「席に座りましょう、という指示」

B様は「人が椅子に座っています、という状態」

と受け取ったようです。

そのため、同じ絵カードを提示したところで、A様は着席できるようになったけれども、

B様には行動の変化のきっかけにはならず、席に着くことはできず仕舞いでした。

とはいえ、ここでかえって闘志に火が付くのがこの私!

できた・できないで終わらないのが笑のスピリッツ!簡単にはあきらめません!

B様に対しては、カードを示す際に、

「2回、トントンとカードを指さす」

というプロンプト(促し)をプラスして再チャレンジすることとしました。

「もう座って下さいよぉ~」なんて、口に出したいのをグッと堪えて、みんなで根気強く支援してみたところ…、

見事に成功!

何と、A様よりも早い期間で定着することができました!!

ここで、なぜ定着できたのか、成功の根拠について改めて考えてみたいと思います。

職員が指差しをプラスした理由は、

カードで「座っている状態」(主題)については理解してもらえたものの、

「それを示されたらところで、どうしたらいいの?」

になってしまったのではないか、と。

そこで、「行う(実行)」の意味合いを付け足すため、「2回、トントンと指差し」(実行・述語)

することで、「これをあなたもして下さい」という指示にならないか、やってみようと思いました。

けっかてきには、

「座る絵カード」(主語)+2回の指差し(述語)=座ってください。」

ということが、視覚的な表現だけでB様に伝わることができました。

「ああ、この椅子に座るという状態を、自分もするんだな」、といった感じだったのかもしれません。

職員は、

〇〇の意味合いを込めたカードを見せて、その通りに動いてもらいたい。

本当にいつもそう思います・・・。

でも、これって職員の一方的な願望に過ぎず、受け取る相手によって理解の仕方が異なることということが、

改めてよく分かりました。

また、こちらの提示する情報とご利用者様の理解が一致すれば、思いの外早く行動の変化につながるんだな、

ということも分かりました。

今回の経験から、カードによって伝えようとする情報が理解してもらえないのを、

「ご利用者様が理解できないから」

で終わることなく、

「職員が、ちゃんとご利用者様の分かりやすい方法で伝えていないのではないか?」

という視点で試行錯誤し続けることの大切さを学びました。

これはもう、実際に支援してみないと分からないものかもしれません。

「私たちが日々行っている支援の中にこそ、ヒントがある」

そういう思いを忘れず、現状に満足せず、ご利用者様の自立に向けて常に新たな

取り組みを続けていく姿勢と、「ご利用者様から学ぶ」という謙虚さを大切に、

これからも目の前の困難に怯まずチャレンジする漢、野﨑でした。

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