利用者様が主役になるための支援とは?
皆様ごぶさたしております。
東京都あきる野市にあります、生活介護笑で生活支援員をしている花田です。
厳しい夏の暑さがようやく和らいできましたが、皆様お元気にお過ごしでしょうか。
年々衣替えのタイミングが難しくなってきていますが、今年は風邪をひかないようしっかり備えておきたいと思う今日この頃です。
支援者としての心構え
さて、私が笑に配属されてから早3年が経ちました。
重度の知的障害者支援の分野は「初めまして」な状態で思い切って飛び込んでみたものの、思っていた以上にそれまでの経験との違いに戸惑う日々。
「求められることが本当に正しいのかな?このまま続けていってもいいのかな?」と思い悩むことが多くなっていたとき、当時の上司がかけてもらった「フロアは利用者様のための場所、職員はお邪魔させてもらっている。」という言葉が心に深く刺さりました。
そして、「この笑の中では職員はあくまでも脇役。利用者様が主役として生き生きと活動できるようになるにはどうしたらいいだろう?」というように、自分の考え方を変えることができました。
ただ、自分の考え方は変わってもなかなか利用者様にこの思いを伝えるのは難しいところで、振り返るとこの3年間はずっと同じことで悩み続けてきたように感じます。
最近も「すぐに自分なりのやり方になってしまうけど、もっと簡単で確実な方法があるのにな。」という思いから、「こういう順番や流れで活動を進めて下さい。」というこちらの意図が伝わるよう試行錯誤をしながら支援に取り組んでみたものの、思い通りにいかずつい落ち込んでしまうことがありました。
地域社会の中には、一定の順番やルールに沿って行動する必要がある場面がたくさんありますよね。
交通ルールを守ることもそうでしょうし、例えばセルフ式の飲食店では手前から欲しいものを選んでお会計まで進むという流れが決まっているところもあります。
そんなとき、目に付いたものを順番に関係なく手に取ったり、決まった流れと逆に選び始めたりしたら大変ですよね。
だからこそ、物事の適切な流れや順番を理解し、その通りに行動することは地域生活の体験の幅を広げるためにとても大切なことだと思うのですが、自閉スペクトラム症の方はすでにこれまでの経験から自分なりの行動パターンができている方が多く、一度定着するとそれを変えるのは非常に難しい…。
でも、挫けそうなときには「フロアは利用者様のための場所、職員はお邪魔させてもらっている。」という言葉を思い返して、あきらめることなく挑戦してきました。
今回は、そんな自分の思考錯誤の歴史の一端を紹介させていただきます。
余暇のワークシステム作り
取り上げるのは、私が担当するA様に提供した余暇のワークシステムについてです。
この利用者様は、元々余暇の時間で取り組まれるものの幅が狭く、特定のものばかりに取り組まれていたのですが、最近ではそれまで取り組めていたものを拒否することが次第に増え、余暇の時間をどのように過ごすのかが大きな課題となっていました。
そこで、自立課題に取り組む際に活用できている課題棚と同じような棚を新たに作成し、めくり式の手順書に貼ってあるカードをかごの右側にマッチングして、一つずつ順番に取り組んでいく仕組みを整えてみました。
【めくり式手順書を活用した余暇棚】
これまでに取り組んできたことを活かす仕組みだったこともあり、棚に入れておいた余暇アイテムには確かに取り組んで下さるようになりました。
でも、手順書の順番通りに進めてほしかったのに、A様はどうしても上の段に置いてあるものから始めたいようで、めくり式手順書のカードの順番を棚の上から下の順に差し替えたり、先に貼ったものは手に取らず一番上のものから始めるようになりました。
「取り組んで下さるようになったのだからまずはこれで十分。」とも思ったのですが、「せっかく自立課題の時にはめくり式の手順書を使って工程を進めることができていたのに、このままでは自立課題専用のもので終わってしまう。もっと色々な生活の場で活かせるツールになってほしい。」と思い直し、さらなる改良を図ることとしました。
ワークシステムVer.2
「上から下の順番で進めることと、めくり式の手順書で示した順番では、上から下の方が優先するのはなぜだろう?写真ではA様に伝わりにくいのか?」と考え、改めてA様が理解しやすい視覚情報が何であるのかを振り返ってみたところ、【色の違い】にとても強く反応されることを思い出しました。
そこで、余暇アイテムをいれておくかごを赤・青・黄の三色で強調し、元々黄色のテープが貼ってあった棚を白いプラスチック製のものに差し替えてみることとしました。
【余暇のワークシステムVer.2】
すると、初回こそめくり式手順書の順番の合わせてかごの順番を差し替えようとされたのですが、「かごに貼ってある色と棚に貼ってある色を合わせて置きましょう」とお伝えしたところ、それ以降は、上下関係なくめくり式手順書の順番通りに取り組まれるようになりました。
A様の強みに合わせて、ご自分でできることの幅を広げることが広げることができたのかな、と思います。
自分のサポートがあって、その通りに利用者様が動いてくれることよりずっと、自分が傍にいなくても利用者様がご自分で活動を進めていく様子を見守る方がうれしくて誇らしい。
あの時上司にかけてもらった「フロアは利用者様のための場所、職員はお邪魔させてもらっている。」という言葉を、自分もようやく形にすることができたのかな、と思います。
最後に
私は高齢者支援の経験が長く、その方ができなくなったことを自分が補ってあげることや、近くで寄り添って安心感を持ってもらうことが大切だと思ってがんばってきました。
今でもそれが間違っているとは思っていません。
でも、笑で利用者支援を続けていくうちに、【自分ができること】よりも【利用者様ができること】を先に考えるようになりました。
そして、【利用者様ができること】を増やす方がずっと難しいということにも気づきました。
これからもたくさん悩んだり、落ち込んだりするんだろうな、と思うと正直気が滅入りそうになりますが、「フロアは利用者様のための場所、職員はお邪魔させてもらっている。」という一言から学んだ【利用者様が主役。自分は脇役で、主役を引き立たせるのが役割。】という信念を大切にしながら、これからも試行錯誤していきたいと思います。
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