重度・自閉症支援のヒヤリ・ハット(特性や強みを考慮する。)
東京都あきる野市にあります生活介護事業所『え笑み』で生活支援員をしています。紙谷です。
今回はヒヤリ・ハットから始めるポジティブな展開について書いてみようかと思います。
重度・自閉症支援のヒヤリ・ハットは独特なものに見えるかもしれません。
高齢分野や児童分野、また工事現場等で話されるヒヤリ・ハットとは違う視点で考えていく必要があります。
『単純に事故の再発を防げばよい。』とお考えの方も多いかと思いますが、発生する原因が想像を超えたりしがちです。
同じような場面でも、利用者様の特性によって発生原因も対処方法も大きく違ってきます。
言葉の理解やいわゆる暗黙の了解(言わずもがなの一般的な解釈)が難しい方がほとんどです。
結果としてことなきをえたという話なのですが、そこから先の可能性を思いついたので共有したいなと思いました。
こんなことがありました。
・生活介護笑の利用者様にはかなり例外ではありますが、活動中に自動販売機でジュースを購入する方がいます。
・ある日いつも使っている自動販売機が故障していました。(これが発覚したのが購入30分前くらいでした。)
・このスケジュールをスキップすること(つまり購入しない。)は極めて難しいという見立てでした。
・発生したらハインリッヒの法則頂点寄りの事態(おそらく他害)が起こってしまうことが予想されました。
さて・・・、どうしたものか・・・・。
まさに城攻めのような緊張感(AI生成)
こんな作戦を考えました。
三人寄れば文殊の知恵と言いますか(本当に近くにいる3人考えました。)
①コイン投入口をテープでバツ印に塞いで様子をみる。←今日はあきらめるを期待する。
②同じ自動販売機がグループホーム友にもあるので同じものを購入しておく。←お金とジュースを交換する。
といった時間内に準備可能な作戦を2つ思いつきました。
『購入前に自動販売機が故障していることを伝えればいいのでは?』とお考えになる方もいるかもしれません。
しかしながら、昨日までできていたことに『今日は無し。』というのはこの利用者様にとって大きな変更です。
数年前になりますが、楽しみにしていた出来事カードを貼り忘れたために不穏になってしまったこともあります。
その際は3人がかりで落ち着かせたと聞いております。
口頭で伝えるより、物理的にできないと確認してもらう方が受け入れやすい時もあります。
それで結果ですが、
①迷わずテープをはがし、コインを投入しました。←失敗💦
・投入しては出てくるお金を取って何度もやり直していました。
・だんだんと身体が震えているのが見て取れました。(思い通りにならず不穏になりかけてますね。💦)
②に移行
・本人の肩を叩いて注意をひき、準備していたコーヒーを見せました。
・お金とジュースを交換しようとジェスチャーで伝えてみましたが、投入を止めませんでした。
・そこでお金を入れたらボタンを押すように促し、出てきたお金を取り出す前にジュースを渡しました。
・ジュースを受け取り自分の席に戻っていきました。←成功!!!
どうせなら取り出し口に入れとけばよかったと反省。
そういえば当たった場合にも備えないと💦
再発防止策とその先
今回の件、再発防止策(故障や売切れ時)として次の対応を共有しました。
・いつも飲んでいるジュースのストックを購入し、置き場所を共有する。
・本人がいつも購入する動作(手続き・プロセス)の流れを経てジュースを渡す。
こうすることで不穏になることなく活動に戻れるということでこの件は終結としました。
さて、これで終わるのも面白くありません。
思索を深め、興味深いなと思ったことを共有して結びとしたいと思います。
『手続きを経てジュースを渡したらいつもどおり自分の席に戻ることができた。』
最初は『120円とコレ交換しましょう。』という感じでトライしたのですが、いっこうにコイン投入を止めませんでした。
ルーティンといいますか、『いつもこの流れでこうするとこうなる。』は自閉症の方にとって特に重要だと思います。
この時私は冷や汗をかきながらも、『プロセス後に渡す。』を思いついたのは、我ながらよくやったと思いました。
ルーティン(いつもと同じ)を好むという特性が垣間見えました。
『本人はどうやらジュースが手に入れば納得することができ不穏になることはないようだ。』
結果としてイレギュラーに対応できたという本人の強みを確認することができました。
情報伝達の工夫と練習が必要だと思いますが、以下のことができるかもしれないと考えました。
・練習すればお金とジュースの直接交換ができるかもしれない。(獲得方法の般化)
・交換できれば、職員にお金を渡して代わりに買ってきてもらうこともできるかもしれない。(受け渡し場所を般化)
・買ってきてもらっている時間はある意味待っていることができる。(待ちスキルの獲得)
・待っている時間に簡単なパズルに取り組むことができる。(待ち時間の延長)
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・『ちょっとすぐ手に入らなかったのでお住いのグループホームに届けておきますね。』(帰ってから飲む。)←実質諦める。
本人の強みとして活かせないものか・・・。
別の飲み物を受け入れてもらう方が先ですかね。
次に同じことが起きたらどうしようとか、対策を立てるのに苦慮する、なにかとネガティブなヒヤリハット報告。
今回は特に前向きに考えることができたのでよかったと思いました。
実はこの案件の2週間後に、売切れパターンで同様の事態が発生しました。
ストックを準備しており、上記の対応が無事に機能しました。
前回の反省点、取り出し口に飲み物を入れておくも実施することができました。
めでたしめでたし。